S学院のオルガン 移転・改造

III 現場での組立 6


木管

 整音作業中にどうしても鳴りの悪いパイプを削ってみた。 右が従来の作り、左は両側板を削った状態。

 これで鳴りが改善される場合もある。

 左の工具は金属管の整音に使う。
歯医者が虫歯部分を埋める金属象嵌を取り付けるときに使う工具を見て思いついた。 歯医者から帰ってきて早速作ったのが右側の工具。

弦系音栓のパイプ

 従来の調律スリットを半田付けしてそこに細い調律窓を開いた。 この種の音栓では、その特徴的な音色を得るためには有効な方法である。

パイプの延長

 長さが足りないパイプは現場で長さを足した。 きれいに径が合うように継ぎ足すのは簡単ではない。
πで計算しても合わないのだ。

パイプの延長

 パイプ用に改造した電気鏝を使い、大理石の板の上でステアリンを使って半田をなじませて半田付けを行う。

 パイプが半田で出来ているため、融点がほとんど同じ。 下手に半田付けをしようとするとパイプが融けて大穴があく事になる。

 恐々半田付けすると熱の伝わりが悪くて半田付けにならない。一見半田付けできているようでいて、てんぷらの衣のようにはがれるのでは使い物にならない。

 SWのVox Humana 8' のパイプ
このように短い共鳴管を持ったリード管をRegal族という。

 オルガニストの話では、以前は使えない音栓だったとか。
整音を始めてそれは明白。まともに鳴っていないのだから。
 音の高さと共鳴管の関係を完全に無視して整音をしようとするから整音にならないのである。 共鳴管の開口を見ていただけば明瞭。 開口を削って良い大きさを見つけるだけではなく、開口部分をへらで持ち上げて微調整をしている。 共鳴管の調整なしにリードをいくらいじってもまともには鳴らないのだ。

 Boschの整音レベルについて良い評判は聞かないが、ここまで無知無能だとは思わなかった。 このレベルの人間を日本へ派遣するBoschの親方(というよりも社長)のオルガンへの認識も低いということであろう。

Mixtur類の整音

Mixtur類は、音量・音質が揃っていることよりも、姿勢正しく鳴ることの方が重要だ。
これは自分の表現なので判りづらいが、個々のパイプが他のパイプの音に影響されること無く常にきちんと鳴らなければならない。

 このことは案外簡単なことではない。 口で吹きながら、いかなる外憂にも負けない鳴り方ができるように緻密な整音をしなければならない。

SWのTrompete 8'

 VoxHumanaでも述べたが、共鳴管と音の高さとの関係がめちゃくちゃであった。
共鳴管が短くて共鳴点を過ぎてしまっているものがほとんどであった。

 錫鉛合金でパイプを継ぎ足すのが本当であるが、大変な手間と時間がかかる。
『時間が無い、費用が無い』で放置するのでは能が無い。

 画像のように紙で共鳴管を伸ばすのは非常に簡単にできる。 そして効果は抜群。 金属で伸ばしたのと変わらない。

 見た目と強度は劣るが音が良くなるので何年か前からこの方法は良く使うようになった。

トレモロ

 いわゆる、Dom Bedos の管内トレモロ。
これはBWのトレモロである。 この形式のトレモロは調整がやっかいである。 動きを見て調整ができるようにアクリルの蓋を使っている。
重りの取付け方はDom Bedos に載っているままでは寄生振動を起こしやすい。 画像の取付け方は、偶然、工房の高橋君が仙台で発見(というより間違えて)した方法。

 使用略語
HW  Hauptwerk 主鍵盤部     I 鍵盤
SW  Schwellwerk スェル鍵盤部 II 鍵盤
Pos  Positiv ポジティフ部     III 鍵盤
Ped      ペダル鍵盤部


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Angefangen 15.Nov.2003