S学院のオルガン 移転・改造

I 調 査

99年11月7日に初めてこのオルガンを診た。
オルガニストも同席してくださり、演奏を聞かせていただき、オルガニストとして持っておられる問題点の指摘もしていただいた。
技術的な問題が非常に多いことは判った。 そのかなりの部分については解決、 または、より良い方向にする方策を頭に描くことができた。

いずれにせよ、電気を使ってタッチを軽くするというBoschの提案が、あまりにも安易な解決であることは明瞭であった。


 

 左下は風を貯める吹子、

 SWへ行くメカニズムが右に見えている
上に見えているのはSWの風箱の下部、いわゆる直下型Schwimmer式吹子の一部が見えている。

 トレモロは電子制御の吹子駆動式であった。 駆動するための導風管が見えている。

 白字は画像に記録したメモ。

 

 SWの内部、狭くてとてもディジタルカメラの広角側でも撮れない。

 このパイプの詰め込みようは異常である。 調律をしようにも手が届かないパイプが二百本以上かもしれない。

 手前のパイプを出して、奥から順に整音と調律を行って、完成後はほとんど調律していないのであろう。

 

 

 

 

これには驚いた。 1964年頃にBoschのオルガンが東京の教会に入った。 その時私は学生アルバイトとして組立を手伝った。

 風箱の製作法はまるで同じ 30年一日のごとく何の工夫も改良も無く過ごしているオルガン製作者がいるのである。 大きな工房(工場)の硬直した姿勢を見る思いであった。

 

 HWの低音部のタッチが悪い原因の一つ。

 長さの割にねじれ強度が不足する構造で作っている。 軸のたるみはおそれて軸を分断して使用している。

ねじれ強度は分断しても全く変わらない、捩れ量は長さに比例することくらいは考えれば判りそうなものである。

 実際の作業ではこの部分は完全に新たに製作することとなった。

  

 整音についてもいくつか観察をした。 Mixturの濁り、共鳴点と無関係なリード管の整音、倍音ばかりが目立つ低音
など、数えればきりがない。 使いようのない音栓も複数ある。 なんという無駄。
これらも一つ一つ突き詰めてゆけばかなり良くできる自信はあった。
しかし、大変な仕事量になることは確実だ。 下手をすると新らしいパイプに整音するよりもやっかいかもしれない。

 埃、傷みはあまり感じなかった。 この楽器から 緻密な設計は全く感じない きわどく追い込んだ作業をする必要が無い設計である。 無難な設計であるが、面白みを感じることはできない。 

 パイプの配置も、順に並べていったらばこうなった というだけの設計であり、音楽的・音響学的配慮は皆無であった。
後のメンテナンスへの配慮も感じられない。 これで、私は後に苦労することになるのだが。

大きなオルガン工場(工房ではない)の欠点の集大成を見る思いであった。

 記録に残したいことは山とあるが、この程度にしておこう。

 使用略語
HW  Hauptwerk 主鍵盤部  I 鍵盤
SW  Schwellwerk スェル鍵盤部 II 鍵盤
Pos  Positiv ポジティフ部  III鍵盤
Ped  ペダル鍵盤部

最初のページへ  次のページへ


須藤オルガン工房TopPageへ

Angefangen 15.Nov.2003