S学院のオルガン 移転・改造

I 解体


解体作業初日の情景

先遣隊の煖エ夫婦は1週間かけて内部のパイプを取出して整理しておいてくれた。

 取出したパイプは音栓ごとに分類、パイプさらに整理する。 太いパイプは寝かせておくと自重で変形するので立ててある。 地震国の日本ではさらに紐で倒れ止めをしなければならない。 幸い、ここは解体する建築である。必要となればどこにでも釘を打ったり、穴をあけたりできる。

 オルガンは正面舞台(講壇)の奥、床面から立っている。 演奏台は扉を閉めているので良くわからないが、演奏者は講壇の向こう側に肩から上だけが見える状態で演奏していた。 楽器として建築空間との釣り合いを全く考慮しない設計と言わざるを得ない。

 レンガで重量を掛けているMagazin吹子。 上にある灰色の紙包みはレンガ、重りとして吹子の上に乗っている。

 容積はかなりある。 改造して蛇腹型にすることになる。

このオルガンでは
オルガンの機能部分はこのような鉄骨に載せている。

 

このオルガンの場合
木造部分は単なる外観を保つための覆いであり、構造ではない。
鉄骨に筋交いなどは全く無い。 耐震性を向上させるために苦労することになった。

 木製の床枠も全く固定はされていなかった。

 SWの風箱下部。 Swimmer吹子とその下に付いているトレモロが見えている。 これらの部分は再度使用することは無かった。

 解体して判明したのであるが、オルガンの後ろ壁は20mmほどの合板が5mm径程度のねじで建築壁に止めてあるだけであった。 そしてその強度に支えられて 正面のPrincipal 16'のパイプとその枠部分などが立っていたのである。

 地震が来なかったのは幸いであった。
この楽器の組立に関わった日本人のオルガン製作家がいた事を知っている。 何の助言もしなかったのであろうか。

 音栓メカニズムの一部。 左のねずみ色の装置はコンビナツィオンから音栓メカニズムを動かすための電磁石。

 手前の回転軸の腕を長くして電磁石の行程をもっと有効に使えば、電磁石の力を存分に発揮できるものを・・ と思った。

 後になって、組立の時に調整を詰めてゆく段階で、
このオルガンの設計者は、てこの比率計算もできないのではないかと疑うことになる。

 使用略語
HW  Hauptwerk 主鍵盤部     I 鍵盤
SW  Schwellwerk スェル鍵盤部 II 鍵盤
Pos  Positiv ポジティフ部     III 鍵盤
Ped      ペダル鍵盤部

前のページ  後のページ


須藤オルガン工房TopPageへ

Angefangen 15.Nov.2003