工具のページ 5

オルガン製作ほど多様な道具を必要とする職業はないでしょう。
その多くは市販の工具です。 市販の工具が具合が良くない場合、あるいは手に入らない場合には、自作するか市販のものを改造することになります。 

『注文しに行っている時間にできるようなものは、自分で作る』  ことです。

ここでは、そのような工具あるいは機械類を「工具のページ1」 「工具のページ2」 「工具のページ3」 「工具のページ4」に続いて、いくつか公開いたします。





工具ではありませんが・・

ポジティフ(小型オルガン)を移動する時に使う道具です。

 館内で移動することだけを考慮して作ったポジティフでした。 音楽ホールに来館できない遠隔地にもオルガン音楽の文化に触れる機会を作ろう ということになり、館外へ移動して演奏会を開催しやすくするために台車製作の依頼を受けました。

 合板にキャスターを付けただけの普通の台車では私が作る意味は無い。 150Kgもある楽器を台車に載せ降ろすには普通ならば3人必要になる。 台車自体の重量もかなりになる。台車の収納場所も必要になる。

 色々考えた末に画像のような機構を作ることができました。 単に持ち上げるだけではなく、ゆっくりと制御された降ろし方ができなければなりません。 そこが最も難しいところでした。 これならば一人で移動が可能です。

  手持ちの象印 レバーチェンブロックは物を吊り上げるだけでなく、ゆっくりと降ろすこともできる。
解体して(取扱説明書には解体禁止と書いてある、良い子はそれを守るかもしれないが、解体して観察し、その動作を明確に理解するチャンスを逃すだけのことである) 機構と動作を理解した、 これは使えると思った。

 象印のサイトhttp://www.elephant.co.jp/product/lever/y2_sun1.html

小型で実によくまとまっている。 解体し、チェンスプロケットを旋盤で削って20mmの鉄パイプの内径に合わせた。 鉄パイプと元スプロケットを銀鑞付けして一体とした。

 あとは画像をご覧頂けば構造は明瞭、
鉄パイプにベルトを巻き取ってポジティフの左右の出っ張りに当てた両脚を引き締めるだけである。 ポジティフの前後のベルトの張力の均衡を保つようにベルトを回して掛けている。

 工房ではこのポジティフの下部模型を作り、重りを載せて実物の重量に近づけて実験を繰り返した。
実験をして初めて、キャスターの向きによっては、ポジティフを降ろす時に両脚が自然に開く条件が整わないことに気付いた。 考えてみれば当然のことである。

 改良策はすでに見つかっているが、今回は見送った。 ふたたび機会があればさらに良いものができそうである。

台車を使った西郷村出張演奏会の様子

                            Apr.2005


 これも道具ではないが・ ・ ・

製図版の横に置いて使っていた。 作ってから20年にはなるであろう。
 製図道具、部品の見本、カタログの抜粋、標準図面、数表などを一まとめにして作業をしやすいようにするために作った。 キャスター付き、書見台付きである。

 Rotring(ロートリング)の製図ペンは1975年頃に購入したもの、その他多くもマイスター試験の頃に揃えた製図道具である。 一部祖父が使っていた製図道具もあるがこれは大正時代のドイツ製が多い。

  これらの製図道具もCADの時代になって滅多に出番は無くなってしまった。 とはいえ、自分にとっては愛着のある物ばかり。 近く片付けようとは思っているが、捨てるつもりは毛頭ない。

                            Juni.2005




 音栓メカニズムは多く鉄を使う。 てこを使ったり、回転軸に腕をつけて動きを伝えたりします。

摩擦無く、かつ遊びやたわみの少ないメカニズムを作るのは簡単ではありません。
現場での微調整には腕の位置調整もあります。 平鉄(当工房では16x4mm 13x3mmを多用)を必要なだけ適切な場所で曲げるのは容易ではありません。 ましてオルガン内に組み込んでからではなおさらです。

いわゆる しゃこ万力 を改造して写真のような道具を作りました。 ねじの力で平鉄を曲げる道具です。
オルガン内の狭い場所でも作業ができるように市販のしゃこ万力は一部を切りとって溶接と鑞付けで小さく改造しています。 強度が心配でしたが、結果は全く問題はありませんでした。

現場では非常に重宝しています。

Aug.2005

不要になったコピー機を解体していたときに歯車の中心が一方向にのみ軸に食いつく仕掛けを見つけた。
ワンウェイクラッチという商品名でカタログに載っているのは知っていた。 まだ、構造を知らない面白い仕掛けなので取っておいた。

解剖して構造を見る前に思いつきでラチェットドライバーを作ってしまった。 その結果、今もって構造がどうなっているかは知らない。

柄はチーク材で作ったので、市販の物の数分の1の重さである。 あまり無理は出来ないであろうが、出張道具の中に入れて重宝している。

 ドライバーの刃の部分は折れた5mmφのドリルの刃を削って製作、両端を使って大小2種の刃を付けてある。抜け止めは銀鑞付け。 回転方向はワンウェイクラッチに差し込む方向で決まる。

不要になった機械などはいつも解体して内部を観察する。 コピー機などは機構学の塊みたいなものだ。
分別廃棄に協力することにもなる。

Nov.2005

CADを使うようになってから出番が少ない製図道具。
自作のビームコンパス。 微動部にはスプリングディバイダーを改造して使っている。 微動部の固定とビーム部分には 締ハタ金を利用している。 ビーム部分は300mmを2本 ネジで繋ぐようになっている。 半径600mmまでの円を描ける。

鉛筆部分はプラスチック製のシャープペンシルを壊れたRotringの製図ペンのネジ部分に接着。 Rotringのコンパスアタッチメントを使ってビームに固定している。

暫くぶりに材料に円弧を描く必要があり、出番となった。

Jan.2006

 以前からダボ(木の丸棒、木材と木材を繋ぐときなどに使う)作り機を作りたいと思っていた。

急に、特殊な寸法の木ダボが必要になったが、 機械を作っている暇がない。刃だけを作り旋盤に取付けて使用してみた。

思いのほか楽にダボを作ることができた。また、この試作によって、本格的に作る場合に注意するべき点も知ることができた。

ここで作っているのは5.8mmφのダボです。

                           Jan.2006

 最近 \100ショップ で工具まで売っている。
締め具を見つけたので50本まとめ買いしておいた。 出来は感心しないが、何せこの価格であるから惜しげなく使える。特に改造するには気楽である。

 画像向こう側が買ったままの状態。
手前は長い握りを作り改造したもの。 ボール盤の定盤の上で治具を固定する場合など握りが長いと助かることがある。

 この握りは工房で台風の時に倒れた山桜を利用した。 握りだけがちゃんとした挽物になってしまった。

                           Jan.2006

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