工具のページ 9

オルガン製作ほど多様な道具を必要とする職業はないでしょう。
その多くは市販の工具です。 市販の工具が具合が良くない場合、あるいは手に入らない場合には、自作するか市販のものを改造することになります。 

『注文しに行っている時間にできるようなものは、自分で作る』  ことです。

ここでは、そのような工具あるいは機械類を「工具のページ1」 「工具のページ2」 「工具のページ3」 「工具のページ4」 「工具のページ5」 「工具のページ6」 「工具のページ7」 「工具のページ8」に続いて、いくつか公開いたします。

 

リード観察照明
Spezial Beleuchtung für Zunge

 

リード管の整音は、リードのカーブを調整して発音や音色を求めて行く作業が大半を占める。

リードの曲がりの不均一や、曲がり具合の変化を観察するは容易ではない。

蛍光管に縞模様を付け、リードに写る縞模様を観察するとリードの曲がり具合を容易に観察できることを 草苅オルガン工房の草苅氏に教わった。

 

 

古い液晶TVを捨てる時に冷陰極蛍光管のバックライトを取っておいたことを思い出し、ケースに入れて縞模様を前面に貼り、現場作業でも不自由しないように固定用の自在ジョイントを作った。

 

 

十分に実用になるものができたと思われる。

電源は過去の携帯電話の充電器を再利用。

 

 

 

Febi. 2014

電熱式 焦がし工具 Mechanikführungbrennzeug

 演奏メカニズムに摩擦は禁物、メカニズムのガイド穴も完璧なまでに摩擦を無くすようにする。

ドリルが良く切れなければ良い穴にはならない。  オルガンの場合ほぼ100%木材を使うので、木の繊維がきれいに切れていなければならない。  穴をあけた時には良さそうに見えても後から(特に高湿度になると)木の繊維が立ってきて摩擦の原因になることがある。 木の繊維を完全に切ることはかなり困難なのだ。

  ヤニの成分で摩擦が大きくなることもある。(特に針葉樹材)

そこで、ドリルで穴をあけた後 赤熱した金属棒で その穴を焦がすことをする。 穴の表面は焦げて炭化し摩擦はほとんど無くなる。 ドリルで折り曲げられただけの木の繊維は焼き切れ、ヤニも焦げになり悪さをしなくなる。

  この方法はニューマティック機構では特に必要である。

  今回はすでに完成している他工房製のポジティフ修理を依頼され、非常に手が入りにくい部分を焦がす必要が出てきた。
金属棒をバーナーで赤熱して焦がすのは難しい部位であった。

  以前からアイデアとして持っていた電熱によって穴の内面を焦がす仕掛けを製作した。
電源には廃棄 電子レンジ から外した高圧トランスを利用。 1次側(AC.100V)は残して、2次側の高圧巻き線を外してそこに太いビニル被覆線を4回巻いた。 出力は2V少々。
1次側に押しボタンスイッチを設け、2次側はビニル線を使用して発熱棒に接続している。

  ボタンを押すと2次側に大電流が流れて発熱棒が赤熱する。 発熱棒をメカニズムの穴に通しておけば、その穴の内面を焦がすことができる。

  当初、発熱棒に鉄棒を使って試みたが(画像の段階では鉄棒を使用している) 高温になると容易に曲がってしまう。
タングステンの棒を試したところ、赤熱しても直線を保っている。 さすがタングステンは最も融点が高い(約3400℃)金属だけのことはある。  充分に実用になった、無事に作業を終えることができた。

トランスは全く温度上昇を感じなかった。 容量は十分であったようである。
大電流が流れるため、ビニル線が結構発熱する。 作業のしやすさを考えると柔軟性も必要である、あまり太い導線は感心しない。
タングステンとの端子もかなり発熱する、持ち手などを工夫する必要があろう。
タングステン棒の一方はクリップで挟むようにしているが、クリップを扱いやすくすることも課題である。

Mai. 2013

 

閉管半田付け蓋 成型工具 Pfeifendeckelform

 金属閉管の蓋は整音後半田付けする。平らな板も使われるが、立体的に丸味を帯びた形の方が音圧をしっかりと受け止めてくれるので音質が良いようである。

 従来はゴム台の上でハンマーで叩いて成形していたが、かなりの労力と時間を要する。
今回、エキセントリックプレスに取付ける型を製作した。
オス型は、旋盤に円弧削りだし治具を製作して取付け、アルミから削りだした。
メス型は、木工旋盤でブナの合板(Multiplex)を目検討で削り、オス型にサンドペーパーを貼ってボール盤に取付けて回転させながらメス型に押し付けて無理やり成形。

所要の作業時間は従来の 1/10 どころではない。 4枚重ねて一気に成型も可能。

下の画像は、その結果。 この後、パイプに合わせて丸く切り抜かなければならない。
次回は順序を逆にして、切りぬいた円盤を成型することを試してみよう。

小さいパイプにはこれでも曲率が不足するので、もっと曲率半径が小さい工具も作らなければならない。

April 2012

パイプ修理工具 Ausbeulzange für Metallpfeifen.

 東関東大震災で被災したオルガンパイプの多くは パイプ足部分に凹みが生じていた。(参照:被災状況と考察
Nach dem Erdbeben März 2011, (über Beschädigung)
um die beschädigte Pfeifen zu restorieren, war diese Zange sehr nützlich.

 本来はパイプ胴と足を切り離し、Kernを外して 型にはめてたたき直して形を整え、再びLabium(唇)を整形し、Kernを半田付けして、胴体と一体に半田付けするという作業をしなければならない。
このようにすると、非常に手間がかかる。 そして、切断や整形に伴い、ある程度パイプの寸法に変化が出る、無理して半田付けをしたりすることとなる。 そしてKern周辺には問題がなくても、整音は完全にやりなおしとなる。 当初の整音は完全に失われる。

 

 

 パイプ足に凹みや変形が生じていても、Kern周辺に問題がないパイプは、凹みの下で足を切断して、凹みだけを修理して再度半田付けして元に戻すこととした。

 凹みを内側から叩き出すのは容易ではない。 左の工具を思いつき製作。
元は、上の自在プライヤーである、うまくできたアイデア商品と感じて購入していた。

嘴を延長して50mmほどの懐を作った。
一方の嘴は、パイプ外側の当てとなる。 もう一方は凹みを内側から押し出すための球面である。

 

 

 

 

左画像
すでに半田をマスクする塗料が塗ってあるので少々不明瞭であるが、凹みが見えている。

 

 

 

 

 

 

外側に平らな嘴を当てて、内側に出ている凹みを押戻してやる、 位置を細かに変えて平均に押し出すときれいに修理が可能である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 塗料が凹みに溜まって乾いたので少々不明瞭であるが、平らになった。

従来の修理法よりも、格段に早く、またパイプを傷めずに修理を行える。

切断した部分は半田付けをするので、半田痕は残る。 内部管では全く問題はないことである。
半田痕が見えてはいけない場合には研磨して事実上見えない状態にすることは可能である。その作業を含めても、従来の作業方法よりずっと良い修理法だと思う。

 

 

 

 

Juli.2011


銅の端切れを集めてバーナーで溶解、耐火煉瓦の上に流した。
適当な鏝先材がないので、鏝先を作ろうということです。


上が普通の半田鏝
中、下段は分解して改造中の半田鏝
中下段の間、右にあるのは銅を溶解して作った鏝先
右にあるのは、溶解して作った銅塊 約5mm厚になった。


完成した 半田鏝、60W  握りは欅材(中空にして熱を逃がしている)

パイプ用 小半田鏝 Kleine Lötkolben für Metallpfeifenbau.

 パイプの半田付けには特殊な半田鏝を使います。 大きな半田鏝は市販品を多少改造するだけで具合のよい物があります。
小さいパイプを作る時、ちょっとした補修、パイプを曲げる時の狭い所用に市販の半田鏝を改造して小さな半田鏝を製作しました。

 

 当初 1.4mmの銅板を3枚重ねて銀鑞付けをして厚さ5mmほどの鏝先にして使っていた。 それなりに便利であった。

しかし、使っているうちに、銅よりも銀鑞の方が浸食が早く鏝先が荒れてくることが判明。 5mm厚ともなると適当な銅材が無いので鋳造してみた。

Schrottkupfer wurde geschmolzen. Davon wurde Kolbenteil geformt.

 

 

 

 

 鋳造と言っても型に流し込むのではなく、耐火煉瓦の上で銅の切れ端を溶かすだけのことである。 冷えた後、金床の上で鍛造して厚みの不均一をならし、鏝先の形に切り取って、研磨、ネジ穴をあけて鏝先とした。

 少々改造した市販の半田鏝(60W)に鏝先を組み込んで完成。
Kupferkolben wurde in herkömmlicher Löter eingebaut. 60Watt genügt ab 1' Pfeife.

鏝の柄をヒーター側に延長して細かい操作をしやすくしている。 軽量であることと相まって非常に使いやすい鏝となった。

 半田はL字型の端面以外には流れてはいけない、側面、前後面は黒く腐食させなければならない。
オルガン製作家に知られているように、熱した鏝先に玉ねぎの汁を塗り黒化させる。

Griff wurde mit dem Holz zum Heizkörper verlängert.
Es bietet eine große Arbeiterleichterung.

 

 

 

 

 

 

 

左は、実際に1/2'ほどのパイプを作っているところ。 銅の鏝先の熱容量が不足して温度変化が大きくなるかと危惧していたが、使ってみた結果、1/2'より小さなパイプでは全く問題を感じなかった。

 あまりに良いのでさらに一台追加製作の予定。

 

 

 

 

 

 

Mai.2011.

金属パイプの型 Pfeifen Formen, aus Holz mit Stahlkern.

 金属パイプを作る時には多数の型を必要とする。 これは円錐形を作るための型。 錫鉛合金の板をこの型に巻きつけて叩いて成形する。

細い型は総鋼、太い型は芯に鋼材、太い部分は木製である。 総鋼で作ると非常に重たくなるのでこのようにした。
計24本。

 製法は、機械旋盤にて両センター削り
芯押し台側をずらすことにより円錐を削りだした。 かなり厄介な作業である。

2011年3月の東日本大震災で被災したパイプの修理には大活躍することとなった。

                  Juni.2011

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